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2019年2月13日水曜日

細野祐二「日産ゴーン事件の研究」『世界』2019年3月号を読む

 ゴーン事件について,『法廷会計学vs粉飾決算』『粉飾決算vs会計基準』の著者,細野祐二氏の意見を聞きたかったので,ちょうどよかった。ゴーン元会長の容疑についての,細野氏の意見は以下の通り。詳細な根拠や,今後の見通しについては,論文実物にあたられたい。

*先送り報酬50億円は,発生主義の原則に基づく客観評価を行うと,有価証券報告書において開示すべき役員報酬には該当しない。
*40億円のSAR報酬は支払いの蓋然性がなく,有価証券報告書において開示すべき役員報酬には該当しない。
*オランダの子会社ジーア社から得た役員報酬は,連結役員報酬に該当しない。
*ゴーン元会長が日産自動車から得ていた高級住宅,家族旅行の費用等は巨額だが,有価証券報告書虚偽記載罪と何の関係もない。うち,姉や知人に対する数千万円の報酬は,日産自動車に対して役務提供がないまま受領している場合には問題になるが,報酬受領者の弁明を聞くことなく,一方的に報道しているのは適切でない。
*12月10日にゴーン元会長を2016年3月期から2018年3月期までの有価証券報告書虚偽記載の容疑で再逮捕したが,この3事業年度の取締役社長は西川廣人社長である。西川社長を逮捕せずゴーン元会長だけ逮捕するのはおかしい。
*個人資産管理会社が新生銀行と契約していた通貨スワップ契約を日産自動車に付け替えたことが特別背任とされる件は,日産自動車の決算で評価損は認識されてもおらず,成り立たない。
*「信用状」を新生銀行に差し入れたサウジアラビアの実業家が経営する会社の口座に販売促進費を振り込んだことが特別背任にあたるとされる件は,この実業家が,実際に日産のために働く会社の会長であるために特別背任は成り立たない。

 私は,ゴーン氏に特定したことではないが,高額報酬を批判する投稿を何度かしてきた。しかし,ゴーン氏の行為が犯罪に当たるのかどうかは別問題だ。本件は引き続き注視したい。

細野祐二(2019)「日産ゴーン事件の研究」『世界』2019年3月号,岩波書店,58-72。


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