劉慈欣(大森望,光吉さくら,ワン・チャイ訳)『時間移民 劉慈欣短編集Ⅱ』早川書房,2024年。Ⅰの『円』を文庫で読んだので,何となくⅡも文庫かと思い込んで冊子体を注文したら四六判だった。
劉慈欣の作品はどれもこれもスケール観が圧倒的だ。しかし,舞台装置だけで話を運んでいるわけではない。例えば,本書のいくつかの作品では,作者が比較的はっきりと人間を信頼しようとしている気配が感じ取れる。ある作品の中で語られている「ひょっとしたら,完全に希望を失ったとまでは言えないかもしれない。自分たちができることをしなければ」という台詞は作者の声でもあろう。しかし,科学・技術がどこまでも発展することについては,作者はそれほど楽観的でもない。いくつかの作品では,純粋に行き着くところまで行こうとする科学・技術にとらわれるならば,人間は生きられないであろうことも示唆されている。両義的でもあり,SFの古典的問題に正面から挑んでもいて,それでいて新鮮である。
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