IMF, World Economic Outlook, April 2020(世界経済見通し 2020年4月)。全文は英語だが,要約は日本語でも読める。2020年の日本のGDPが-5.2%,世界の経済成長がマイナス3.0%,世界貿易は-11.0%になるとの予測。大恐慌以来の経済後退であり,Great Depressionに対しGreat Lockdown(大封鎖)というべき事態だとしている。英語全文をいま読み切ることはできないが,要約と図表を見ていくつか気づいたことがある。
IMFは,世界金融危機以後,構造調整を振り回さなくなったが,今回も,産業や労働者への財政的支援,苦境に陥った世帯や企業への融資条件の(緩和する方向での)見直しと,まともなことを言っている。
2021年には経済がV字回復するというのがメインのシナリオなのだが,フルバージョンのレポートの末尾には代替シナリオも添えられている。2020年のアウトブレイクが長引いた場合,2021年に第2波のアウトブレイクが来た場合,その両方の場合だ。
また先進国の方が感染対策のための資源動員能力を持っているとする一方,メインのシナリオでは,新興国・途上国の方が先進国よりも高い経済成長率によって回復することにも注意が必要だ。2021年第4四半期のGDPが2019年度第1四半期に対してどれほどになるかを見ると,新興国・途上国は1割増しと予想されるのに対し,先進国はプラマイゼロまでしか回復しないというのだ。
川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。
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