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2025年4月21日月曜日

改善活動は,時間外の小集団活動を主力とするのでもないし,管理職や職長抜きに現場だけでやるものでもない

「現場の知恵」で作業標準を無視した作業方法を勝手に実行したら大問題になるという記事が,『日経XTECH』に掲載されていた。2ページ目以後有料記事で失礼。

 当たり前のようだが,実は重要な含意を持っている。

 適切な改善方法は,もちろん,正式の提案による作業標準の書き換えである。そのためには,もちろん正規の手続きを踏み,作業員の意見を汲んで(名称は企業によりさまざまだが)職長が提案し,その上位の会議体が承認していなければならない。これまでトヨタを筆頭とする日本企業が行ってきた,生産現場での改善活動も,もちろんこのようなものである。

 だからどうしたと人は言うだろうが,この話の含意は「改善活動は,時間外の小集団活動を主力とするのでもないし,管理職や職長抜きに現場だけでやるものでもない」ということである。

 QCサークルなど,正規業務以外に,労働時間外に「自主的に」行うものが主力なのではない(もっとも,いまではさすがに労基法逃れではないかと突っ込まれるので,正規の時間とみなしている会社も多い)。そうではなく,正規の仕事の中に改善活動があるのである。

 また「現場労働者の知恵」や「現場の作業員の知的熟練」だけを取り出してほめたたえるのも,現場に寄り添っているようでいて,実は間違いだということである。なぜならば,改善活動は,「職長とその上位の管理階層が」正規の改善手続きを回していくことによって成り立っているからである。この記事が指摘するように,現場で勝手に作業方法を変えたのを職長とその上位の管理職が把握できないというのは論外である。逆に,管理職と職長は状況を把握してはいるが,組織が硬直化してしまい,「改善活動など面倒だし評価されないからやらない」という態度になってもだめである。時にその両方が生じることもある。これは工場に限ったことではないので,オフィスのことで覚えのある方もいるだろう。

 「正規の仕事の一部として,作業員の意をくみながら,正規の改善手順を,管理階層と職長が懸命に回す。具体的には相当な頻度で作業標準を書き換える」。これが改善活動である。現場の創意工夫を受け止めて改善することと,組織の決められたルールを守ることを両方実行すれば,手間暇は恐ろしく増える。それでもやるところに難しさがあり,意義もあるのである。

 その前提として,こうした改善に,少なくとも正社員の工場労働者は参加してくれるような労使関係がある。そのような労使関係が珍しく,多くの国では容易に実現できなかったから,ひところ,日本の改善活動には秘密があるように思われたのである。

 なお,生産革新を目指すにあたり,こうした改善活動ではどうにもならないことが,この25年くらいは増えているのではないかという問題は,もちろん別に存在する。

古谷賢一「作業標準を無視した「現場の知恵」が全数回収を招いた企業」『日経XTECH』2025年4月11日。



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