Ka-Bataブログ

川端望のブログです。経済,経営,社会全般についてのノートを発信します。専攻は産業発展論。研究対象はアジアの鉄鋼業を中心としています。学部向け講義は日本経済を担当。唐突に,特撮映画・ドラマやアニメについて書くこともあります。

2019年9月29日日曜日

インド人の流入・流出の効果を考えるには,そのハイスキル比率の高さと,日本におけるICT人材の不足を念頭に置いた方がいい

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この記事のタイトルにある「優秀なインド人」の実態を考える一つの切り口として,在日インド人の構成を考える。2018年12月現在の中長期在留インド人は3万5419人で,在留外国人の1.3%を占める。問題はその内部構成だ。誤差を承知で在留資格の種類により,経営者,ホワイトカラー,専門家...
2019年9月22日日曜日

L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』ノート(3):財政赤字によるインフレーション(ヒトとモノのクラウディング・アウト)は重要な政策基準

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  前回のノート(2) では,財政赤字によるカネのクラウディング・アウト,すなわち金利高騰は生じないことを論じた。だからといって,金利が政策変数として役に立たないわけではない。レイ教授も,債務の爆発的上昇を避けるために,政府は自ら支払う金利を経済成長率より低く保たねばならないこと...

個別企業がM&Aに「投資」しても社会的には「縮み志向による投資の停滞」が終わるわけではない

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 『日経』本紙13版,2019年9月21日1面記事「日立,成長へ1兆円調達」。「これまで日本企業は借金返済を優先し,投資などは抑制してきた。そうした『縮み志向』を抜け出す企業が増えていく可能性がある」との指摘。だが,その紙面に掲載されていた以下のグラフを見て欲しい。 ...
2019年9月9日月曜日

第2学期学部ゼミテキストはダニ・ロドリック『貿易戦争の政治経済学:資本主義を再構築する』

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 学部ゼミテキスト選定。今年度の第1学期はリチャード・ボールドウィン『世界経済 大いなる収斂』を読んだ。ボールドウィン教授は技術革命を中心にグローバリゼーションを段階的に論じ,基本的にはその必然性と積極的意義を強調した。すなわち,ICTがもたらす第2のアンバンドリング,グローバル...
2019年9月7日土曜日

マイナス金利は失敗であり,深堀りは傷口を広げる

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 2019年9月7日『日本経済新聞』1面トップ(注:仙台宅配の13版)の日銀黒田総裁インタビュー。マイナス金利深堀りを選択肢の一つとして挙げているが,その理由として黒田総裁は,長短金利差が縮小してイールドカーブが寝ていることに集中していることばかりあげている。つまり,生命保険...
2019年9月5日木曜日

L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』ノート(2):財政赤字によるカネのクラウディング・アウトは起こらない

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 MMTは「主権を有し,不換通貨を発行する政府は,その通貨において支払い不能になることはない」と主張する。これに対して,まともな形で「いや,デフォルトする」と批判する議論は,さすがに少ない。もう少し現実的にありそうな事態として,財政赤字が累積すると支払い続けることは可能でも,1)...
2019年9月3日火曜日

L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』ノート(1):信用貨幣,そして主権通貨の流通根拠

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 L・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』。一応読み通した。これまでMMTについて,目についた限りの論説から理解に努めて投稿して来たが,どうやら理解は誤ってはいなかったようでほっとした。なので,MMTの主張を改めて紹介することはしない。むしろ,本書を読んで,理論的により深め...
2019年8月29日木曜日

「平和の少女像」:どの国が正しいかを決めることではなく,戦争を告発すること

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 「平和の少女像」について,展示の自由と別に,以前より思っていることを書く。  まず,背景への認識。そもそも,わが日本国政府の見解は「安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心...

熊倉正修『日本のマクロ経済政策』岩波書店,2019年を読んで:財政赤字に関心を集中し過ぎていないか

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 熊倉正修『日本のマクロ経済政策』岩波書店,2019年。熊倉教授の論文は,通貨政策,金融政策を制度に即して語っているため,「日本経済」の講義を作成する際にいくつか読ませていただいた。今回の岩波新書では,学術論文では抑えられていた日本のマクロ経済政策に対する批判的見地がはっきりと打...
2019年8月27日火曜日

野口旭「MMT(現代貨幣理論)の批判的検討」(6完)を読んで。全体のまとめ

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 野口教授によるMMT検討と批判第6回(最終回)。MMTと正統派の共存可能性がテーマ。  野口教授の基本的結論は,<一部分は共存可能だが,多くの部分において共存不可能>というものだ。共存可能な部分も取りだそうとしているのは,野口教授の公平さを示している。ただ,共存している部分...
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自己紹介

川端望 (Nozomu Kawabata)
東北大学大学院経済学研究科教授をしております。本ブログで表明している見解は,すべて私個人のものであり,所属機関の見解ではありません。
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