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2020年8月13日木曜日

PCR検査を拡充すべき範囲と拡充すべきでない範囲

  何だか報道の様子がおかしいので(FNN「グッディ!」のこと。FNNプライムオンライン,2020円7月30日。),もう一度思考を整理したい。素人談義をしたくないのだが,それにしてもこの報道は混乱しすぎていると思う。


PCR検査を拡充すべき範囲
*感染が流行している地域でPCR検査のキャパシティを上げるのは当然だ。
*医療従事者などハイリスクの職場で働く人に定期検査をするために検査を拡大するのも,よい。
*「かかりつけ医が必要と認めた人全員に検査する」のも必要だ。東京都医師会が地域PCR検査センターでやっているのはこれである。

 これだけでもかなりの拡充が必要なことは,東京都医師会の奮戦ぶりから分かる。それは意味のある拡充だ。

PCR検査を拡充すべきでない範囲
*「住民全員に検査をする」という目標は不適切だ。だから世田谷区が「誰でも,いつでも,何度でも」をめざすのは適切でないと思う。

理由

*感染者は超大まかに二つの観点で分けられる。
1)a)8割の感染者は人にうつさず,b)2割のスプレッダーがうつす。
2)c)症状があって苦しんでいる感染者と,d)無症状の感染者がいる。無症状でも人にうつすことはある。
*1)では,a)8割の方を検査で判別しても,その人は治療できるが,感染拡大防止という点では効果がない。b)2割の方を見つけて,初めて拡大が防止できる。2)については,当たり前だが症状があって苦しんでいる人に適切な治療しなければならない。
*医者の前にいる一人の患者に症状があって感染が疑われた場合,まずc)の感染者かどうかを検査で確認するが,それだけではa)の8割かb)の2割かわからない。しかし,感染拡大地域ではb)であることを疑う価値がある。
*だから,PCR検査で発見しなければならないのは何よりもb)と,感染拡大地域でのc)である。そのために必要なPCR検査とは,第1にクラスターの発見と追跡のための検査,第2に医師が「感染しているかも」と判断した患者への検査だ。そこまでできるように政府・自治体は全力を挙げるべきだ。
*しかそれ以外のところに検査を広げるために,人と金と労力を投入すべきではない。そんなことをすれば行なうべきクラスター追跡や発見すべき患者の発見に集中できなくなる。検査を進めれば陽性率は下がるし,a)の8割かつd)の無症状の人を発見することになり,その人たちの隔離・治療に力を取られるからだ。感染拡大防止にはb)の2割の発見と隔離が大事なのに。その上,医師の診断を抜きに検査すれば偽陰性の率も上がり,「偽りの安心」問題に対処しなければならなくなる。
*前にも書いたが,PCR検査は簡便な市販薬のようなものでなく,処方薬のようなものだ。処方薬は医師が「この人病気だからこの薬を出しましょう」と決めるから役に立つ。PCR検査も医師やクラスター対策班が「この人(集団)が危ういから検査しましょう」と決めて役に立つのだ。「全員PCR検査しろ」は,薬に例えて言うと,処方薬なのに「医師の診断など要らないから,飲みたい人全員が飲めるように薬を店に置け。病院と薬局の他の仕事を止めてでも,そのことに金と労力を割け」と言っているのと同じであると思う。

※東京都医師会が行っているPCR検査が画期的なのは,「帰国者・接触者 電話相談センター」を通さなくても,かかりつけ医の判断によってPCR検査を実行できることだ。ただし勘違いしてはならないのは,医師をすっ飛ばして誰でも検査を受けられるものではないということだ。
概念図
https://www.tokyo.med.or.jp/wp-content/uploads/application/pdf/20200527-taiou.pdf

「PCR検査を「誰でも いつでも 何度でも」社会活動継続のための検査体制を独自に目指す…大注目の“世田谷モデル”とは?」FNNプライムオンライン,2020年7月30日。
https://www.fnn.jp/articles/-/68692

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