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2019年2月11日月曜日

天牛堺書店のこと

 ちょっと前のニュースだが,堺を中心に出店していた新歓・古書兼用の天牛堺書店が1月28日に倒産した。1992年から97年まで,天牛堺書店三国ヶ丘店には頻繁に,とくに河内長野市に住んでいた2年間は毎日のように通った。大阪市立大学のある杉本町から阪和線で3駅南下して三国ヶ丘駅で降り,そこから南海高野線で千代田駅まで乗って帰宅していたのだが,乗り換えの際に駅改札側の古本ワゴンを眺めるのが日課だった。そしてついつい買ってしまい,そばにあったミスタードーナツか,電車の中で読みふけるのだった(そう言えば,あの頃の方が酒量は少なかった)。その頃,ホームではルーズソックス女子高生が,ポケベルに文字を送信するために公衆電話のボタンを乱打していた。
 おりしも日本経済が低成長期に突入した頃であり,どこの図書室から放出されたのかという古書が山のように,廉価でたたき売られていたのをよく覚えている。例えば,社史である。新日鐵・八幡製鐵・富士製鐵の社史『炎とともに』は三国ヶ丘店で全3冊を3000円未満で買ったはずだ。『八幡製鉄所八十年史』全4冊はイトーヨーカドー堺店で,これも3000円未満で買った。他にもたくさん,たいていは1冊1000円未満で買ったはずだが,いまとなってはどれだったか思い出せない。また,産業論・企業論・経営学の本や調査報告書,社史,伝記,ビジネス書は全般的にたいへん多かった。
 実は,私の故郷,仙台の古書店は,土地柄なのか店主の方針なのか,人文科学の本は多いのに経済・経営学の,とくに実証系の本は少なく,あったとしても農業が多くて鉱工業と商業が少ないという,妙な偏りを持っていたので,大阪に就職して天牛堺書店の品ぞろえに狂喜乱舞していたのを覚えている。

「大阪)天牛堺書店が破産 府内に12店舗展開」朝日新聞DEGITAL,2019年1月30日。

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